7.22020
囲碁アマ高段者が思う「棋譜並べから得られる効果」とは?

棋譜並べで強くなれました
棋譜並べは囲碁の勉強法の1つです。
プロ棋士の棋譜、江戸時代に打たれた棋譜、はたまたAIが打った棋譜などを並べることで、強い人の感覚に触れることができます。
僕は棋譜並べがとても好きで、生徒さんにもおすすめしているのですが、
「どういう効果があるか分からないし、プロの一手を理解するなんて無理だ。」といった声をよくいただきます。
「プロ棋士の手を理解できないのに、やる意味があるのか?」といった疑問を感じている方は多いようです。
この疑問を僕も感じなかったわけではありません。
しかし自分の上達過程を振り返った時に、「棋譜を並べていたから強くなれた」と思うことは多々あります。
なのでこの記事では「棋譜を並べることで、それぞれの棋力において、どういう効果を得られるのか」について、感じていることをまとめていきます。
棋力別・棋譜並べから得られる効果
棋譜並べから得られる効果は、大きく4つあると思います。
1・囲碁の一局の流れを体感できる
2・並べているうちに、定石など部分的な技を覚えられる
3・強い人の感覚に触れられる
4・囲碁が楽しくなる
これら4つのことは、それぞれ強く感じていた時期が違うので、どういう棋力の時に、どういう効果を得られていたのかを紹介していきます。
1・一局の流れを体感できる(初心者〜2桁級向け)
これは19路盤にまだ慣れていない初心者の方に適したポイントです。
囲碁を始めたばかりの頃は、囲碁の陣地がどのようにできあがっていくのか、イメージしにくい方が多いと思います。
強い人から「陣地を作りたいところに石を置けば良いんだよ」と無責任に言われても、そもそも陣地をイメージできない。
そういう時に棋譜並べが役立ちます。
最初は数字を追うことで精一杯だと思いますが、盤上の変化を時々見てみると、「石が増えていくうちに、たしかに陣地が出来上がってる!」と気づけるタイミングがあります。
僕も上記のように、最初は訳が分かりませんでしたが、棋譜を並べてみて、囲碁が何を考えるゲームなのかようやく実感できました。
そこで囲碁の世界観に気づけ、夢中になるきっかけになりました。
プロが打つ一手の意味は、もちろん分かりません。
なのでこの頃は、どういう流れで陣地の境界線が決まっていくのかだけに集中して並べてみましょう。
序盤はよく分からなくても、終盤に近づくに連れて陣地ができあがっていくので、一局の流れを体感できると思います。
2・並べているうちに、定石など部分的な技を覚えられる(2桁級〜1桁級向け)
棋譜を並べるときは、同じ棋譜を3回並べることをおすすめしています。
※参考記事:『囲碁アマ高段者がおすすめする棋譜並べを楽しむポイント』
同じ棋譜を何度も並べているうちに、なんとなくでも手順を覚えてきて、部分的な対応を見る余裕が生まれます。
するとある部分においての定石を自然と覚えられます。
解説付きの棋譜であれば、「◯手目〜△手目までは定石です」といった注釈が書かれている場合が多いので、定石を意識して並べられるでしょう。
定石は無限にあるため、それだけを覚えようとしてもキリがありません。
それよりも棋譜を並べているうちに、ついでに覚えられたという流れが楽だと思います。
定石を覚えるということは、きれいな石の形を覚えるということなので、それ以外の場面でも、効率よく対応できるようになります。
石がぶつかった時の対応において、汎用性の高い効果を得られるでしょう。
3・強い人の感覚に触れられる(上級者〜低段者向け)
部分的な基本対応を一通りできる上級者クラス。
次へのステップアップのためには、盤上を広く捉える大局観が問われてきます。
この段階では、自分よりも強い人の棋譜を並べながら、どういうタイミングで手抜きしているか(他のエリアに向かっているか)を確認しながら並べると良いでしょう。
たとえば、自分からすると右上の黒石が心配な形になっている。
普段の自分ならば、迷わずに守りをもう一手かけるような状況です。
しかし強い人(基本的にプロ棋士)がそこに打たずに、別のエリアに向かっていったとします。
こういう時は、その心配なところをさらに心配に思うよりも、「強い人がそうしているのだから、どうにかすれば大丈夫なのだろう」と、素直に受け入れ、感覚を取り入れることだけに焦点を当てましょう。
もしその心配な形が自分の対局で出てきたら、プロ棋士の真似をして、思い切って放置してみる。
相手が心配なところを攻めてきたら、その時にどうすればいいのか読みましょう。
そこで対応を間違えてしまったとしても、どう対応すればよかったのかを後で振り返ればOKです。
やってはいけないのは、「プロ棋士は放置していたけど、自分は心配だからもう一手守っておこう」と、自分の感覚から抜け出そうとしないことです。
それではせっかく強い人の感覚に触れても、活かせていませんからね。
極端なことを言ってしまえば、囲碁はどんな棋力の人でも、「なんとなくここかな?」と思うところに打っています。
強い人の「なんとなく」を感じとり、うまく自分の対局に取り入れていきましょう。
4・囲碁が楽しくなる(すべての囲碁ファン向け)
囲碁はどれだけ勉強しても、すべてを網羅できないほど奥の深いゲームです。
その中で棋譜並べは、今まで知らなかった一手の存在を教えてくれます。
そういう手を増やすことで、自分の囲碁の幅が広がり、これまで以上に楽しくなることでしょう。
対局は疲れるからやりたくない。
詰碁も難しくてやりたくないという時があると思います。
そういう時にぜひ棋譜を並べてみてください。
以前書いた『囲碁アマ高段者がおすすめする棋譜並べを楽しむポイント』でも言っていますが、難しく考えずに、ただ数字を追って並べるだけでもOKです。
囲碁の柔軟さを高めるような、頭のストレッチをしている感覚で楽しみましょう。
棋譜を探すには
棋譜をどうやって探せばいいのかわからない方もいると思います。
これは意外と簡単で、ネットで検索をかけるとたくさんの棋譜が候補に出てきます。
「応援している棋士の名前 棋譜」や、「攻め 棋譜」、「ヒカルの碁 棋譜」など、いろいろな単語で検索してみてください。
また棋譜に特化した囲碁書籍も多くありますので、通販サイト等で検索してもいいでしょう。
楽しみながら強くなる
ここまで棋譜並べから得られる効果について、棋力別に書いてきました。
上記にあげたことは、あくまで楽しむための目安です。
もしほかの楽しみ方を見つけた時には、ぜひその方法を大切にしてください。
囲碁の勉強は長く継続してこそ、力としてついてきます。
そのため自分が楽しいと思える方法ほど、向いているやり方はありません。
この記事で棋譜並べに興味をもっていただき、今後の勉強に少しでも役立てば幸いです。
記:IGOホールディングス株式会社 代表 井桁健太
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